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文学フリマでは、すぐに売り切れてしまって手に入らなかった方も多かったようですので、この機会にぜひ、お読みいただければ幸いです。
前回、ミステリー系を紹介したので、純文学系とその他を。
基本的に、わたしは純文学を好んで読みます。
今年の前半に読んで、良かった小説をいくつか紹介します。
多分、今年、読んでいる途中に一番興奮してツイートしたのは、『改良』だと思います。
純文学は、あらすじで語れるものではないので、どう伝えればいいかわからないのですが、とにかく『改良』は良かったです。
とくにラストは、これぞ純文学な感じでした。
コンビニ人間は有名なので、読んだことのある方も多いんじゃなかと思います。
主人公の行動、思考の一貫性。
コンビニ人間の良さはここに尽きると思います。
今村夏子先生の小説は、疑う余地もなく純文学ってところが魅力です。
こちらあみ子を読んだのは、多分昨年なので、ここで紹介するのは、同時収録の『ピクニック』です。
ピクニックを読む気になったのは、『花束みたいな恋をした』という映画を観たからです。映画自体は、それほどだったため、途中で休んで、映画内で語られた『ピクニック』を読もうと思ったんです。
「今村夏子さんの『ピクニック』を読んでも何も感じない人」
映画内に2度、出てきた台詞の意図が知りたくなって。
『ピクニック』メチャクチャ良かった。
信じてあげることの残酷さが描かれていて。
そして、つぎに紹介する『あひる』にも、その要素が含まれていました。
主人公と、両親で暮らす家に、あひるがやってくることで、近所の小学生が家に遊びに来るようになる。
設定はそんな感じです。
こちらは、子どもの残酷さがさりげなく提示されていて、良かったです。
読んで感じてくださいって思います。
そして、最後にホラー。
ホラーはほとんど読まないのに、とうとう、『リング』を読みました。
『リング』めっちゃ良かった。
ホラーこそ、描写が大事なんだって、よくわかりました。
すごく丁寧に情景描写がしてあって、「ここまで書き込むんだ」と、衝撃でした。
『らせん』は、えええええ! と、驚くことはあったけれど、『リング』ほどは面白いと思えず。
『ループ』にいたっては、なんだこれ……って感じでした。
バースデイは今のところ読む予定はないです。
2022年の前半は、私にしてはたくさん小説を読んだ。
それに、読書家の人に面白いとすすめられた物ばかりだったので、外れなし。
とくに、心に残っている小説を、ざっくり、紹介する。
(後半は全く読んでないので紹介するものはありません。)
(あくまで個人の好みなので、あしからず)
ネタバレなしで、この小説のすごさを語るのは難しい。
とにかく、ぐいぐい引き込まれるし、ラストは……。
ラストでどう感じたかを書くだけで、ネタバレになってしまう。
絶対面白いから読んで、としか言えない。
ミステリーは、ネタバレするわけにはいかないから、感想が難しい。
文章から感じられるほの暗い雰囲気も良いし、登場人物の関係性がなかなか官能的だった。最後まで読んで、真相をしった後に読み返すと、また違う楽しみ方ができると思う。
横山秀夫先生の作品なので、失敗はないと思い買った。ところが、前半、かなり苦戦した。丁寧に丁寧に建築家の仕事が描かれ、謎自体はそう強くなかったので、読み進むのに時間が……。
それでも、後半になってからの加速がすごかった。そして、最後に手にする感動の深さ。
この景色をみるために、あの前半があったのだと、納得。横山秀夫先生だから許される書き方かなあと思うので、まねはできないけれど、いつか、この作品のような感動を描けたらと、一つの目標ができた。
第29回江戸川乱歩賞受賞の本格推理作。
今更読んだのだけど……
メチャクチャ面白かった。長年、乱歩賞で一番好きな作品は『脳男』と言い続けていたのだけど、変えてしまうかもと思うくらいに面白かった。(今はまだ保留中)
浮世絵には全く興味がなかったのに、とにかく写楽の謎が気になって気になって読み進んだ。殺人事件関係も、ちゃんと本格になっていたし。
とにかく、間違いなく面白いのでおすすめ。
写楽殺人事件にはまって、買ってしまった浮世絵のポスター。
第24回江戸川乱歩賞受賞作品。
こちらも今更ながら、買って読んだ。
なんともいえずチャラい(当時はそんな言葉はなかったと思うが)大学生達が、テレビスタジオ内で起こった殺人事件の謎を追う。
バンドマンとテレビマンばかり出てくるから、軽薄な感じが無理な人もいるかも。
私は、結構楽しめた。
栗本薫先生のミステリーでは、『天狼星』が好き。
猟奇殺人物で、とてもグロい。
島田荘司先生のデビュー作。
本格推理は苦手としているので、なかなか手が伸びないのだけど、勉強のためにと購入。
冒頭から「すげー!」と、驚かされた。
あのなんとも言えない執拗なグロ描写。
その後、占星術のことと、雪の足跡考察で、だいぶ読むのに苦労したけれど、途中から舞台が京都に移って、知っているところばかり出てくるから、どんどん読めた。
トリックについては、他の作品に使われちゃったし、今となっては目新しくはないけれど、当時はどれほどの衝撃を与えたかと、島田荘司先生のすごさを思い知った。
これも、どこが良かったかを具体的に書くと、ネタバレになってしまう。
私は、主人公の妻のことを、受け付けられなかったので、手放しには楽しめなかった。
ミステリーを書くための勉強としては、構成や、伏線など、いろいろとためになった。
昨年のこと。
お友達のしのき美緒さんが主催のアドベントカレンダーに参加し、短編小説を書いた。
早い者勝ちで日付を選べたので、迷わずに、『12月21日』を選んだ。
その日は、Spitzのボーカル草野マサムネさんのお誕生日。
Spitz愛にあふれた小説を書くと、意気込みだけはすごかったのを覚えている。
だけど、短編は大の苦手な私。それでも、「いつもは書かない物を書く」と決めて、真剣に取り組んだ。そうして書き上がったのが『空の飛び方』だった。
アルバム『空の飛び方』は、Spitzの大ヒット曲『空も飛べるはず』が収録されているので、ご存じの方が多いのではないだろうか。
そう、その時には、1曲リピートではなく、アルバムリピートでずっと聴いて書いたのだ。
『空の飛び方』の、あらすじはこうだ。
僕と遥は、幼稚園からの幼馴染だ。僕は遥のことが好きだけど、ずっと素直になれずにいた。高校一年、僕の16歳の誕生日に遥がスピッツのアルバム『空の飛び方』をプレゼントしてくれた。『空の飛び方』を聴いて、僕もスピッツが好きになった。遥の提案で、その年の12月21日に、二人で『草野マサムネ誕生会』を開いた。『草野マサムネ誕生会』は、その後も毎年恒例の行事になったのだが、僕たちは相変わらず幼馴染のままだった。
高校を卒業し別々の大学に通うようになってから、僕たちの間には微妙な距離が生まれて……。
今回、1年経ったので『空の飛び方』を、noteにコピペして公開した。
その、なにげ無く投稿した作品が、noteの公式マガジンに追加された。
そして、マガジンに追加された翌日、また新たな通知が来た。
いったい、何がどこに載ってるのかと探して、見つけた。
そうしたら、ビューがすごいことになっていた!
2度とないことだから、ここに記録しておく。
過去に、小説のテーマに使ったSpitzの曲を紹介していきます。
1曲目は、夜を駆けるです。
こちらは、アルバム『三日月ロック』に収録されています。
私は、Spitzのアルバムを全部持っていますが、一番好きなアルバムは、『三日月ロック』です。
アルバムのタイトルも、なんとも言えずSpitzっぽい。
さて、『夜を駆ける』の魅力についてお話しましょう。
イントロからも漂う「しんみり感」と、歌詞の「密会してそう」な感じ。
おまけにさびは、だめだとわかっているのに止まれない感じなんですよね。
歌詞を読んでみるだけでも、雰囲気伝わると思います。
音楽系のサブスクに入っている方は、ぜひ、一度聴いてみてください。
ひとつ、気をつけていただきたいのは、『夜に駆ける』ではなく、『夜を駆ける』だということ。
そんな『夜を駆ける』を1曲リピートして書き上げた小説、『藍 深紅 ……』は、8歳しか離れていない叔父に想いをよせる女子高生の禁断の恋を描いた長編小説となっております。
少し早めですが、今年の活動を振り返ってみようと思います
今年も、別名義の公募チャレンジ中心だったため、こちらに書けることは少ないです。
今年一番大きなことは、2月9日に赤いホタルが完全完結したことかと思います。
本編は2016年の5月11日に完結しているので、完全完結とは、番外編を含めての完結となります。
それから、昨年に引き続き、5月1日〆切のNolaの次世代作家文芸賞に応募しました。
応募作品は、サイトに公開してある西君の皿です。
結果は、一次通過でした。
そしてもう一つ、『教授の実験室』という作品を、(URLで応募できる)5月末〆切のある賞に応募しました。
官能レーベルとして有名なところで、軽い気持ちで投稿したのです。
一次通過作品が発表になったとき、通過作品にあったんですが、「これは、間違ってしまった……」と思いました。
なぜなら、他の通過作品のタイトルが、アダルトビデオっぽいタイトルばっかりだったんです。
こちらは、二次まで通過しました。
そして、6月に、アンソロジーのお誘いをいただいて、『八百年の孤独』を書きました。
この後は、1月末の乱歩賞〆切まで、根を詰めないといけないので、今年の紫倉紫としての活動は、終了です。
来年は、もう少し、WEB小説の更新ができるといいなと思います。
望月麻衣先生の発案で、編集:藤白圭先生 制作:愉怪屋さんで、エブリスタに縁のあるクリエイターが集まり、テーマ『余命』で短編を書きました。
一作一作に、実力派絵師さんの書き下ろしイラストの扉絵もついています。
小説(五十音順)
桜瀬 ひな様 神谷 信二様 きたみまゆ様 紫倉 紫 白石 さよ様 千冬 様 鳥谷 綾斗様 野々山 りお様 藤白 圭 様 望月 麻衣様
扉絵(五十音順)
ありす様 うめ丸様 お粥様 かな様 graffage様 com 様 セン様 IKAO様 mimori様 ヤマヂ様
表紙:まかろんK様
望月麻衣先生にインタビューいただいた記事はこちらです。
私の大好きな小説家、平野啓一郎先生の小説『ある男』が映画化されたので観に行った。
平野啓一郎先生の作品の中で一番好きなのは『空白を満たしなさい』という小説なのだが、人に、先生の作品を勧めるときにはいつも『ある男』と言う。
理由は、適度な長さで、エンタテインメント小説に近い引きもあって、そして、純文学的な読み応えを兼ね備えた小説だからだ。
この小説の主人公は、城戸という弁護士だ。
城戸は宮崎に住む谷口里枝からある依頼を受ける。それは、亡くなった彼女の夫が、本当は誰だったかを調査するというものだった。
谷口大祐は宮崎に移り住み木こりなった。そして、息子を連れて出戻りをしていた里枝と出会い、結婚をする。その数年後に、仕事中の事故で突然亡くなったのだ。
結婚した頃にはすでに疎遠になっていた大祐の実家に里枝が連絡をとったことで、亡くなった男が、谷口大祐とは別人だったとわかる。
里枝と結婚していた男は、誰なのか?
城戸は、『ある男』の正体探しにのめり込んでいく。
原作のあらすじをざっくり紹介するとこんな感じだ。
『ある男』の映画化が発表されたときはとにかく歓喜した。
それも、私の推しで弁護士の『城戸さん』を、妻夫木聡さんが演じるのだ。つい、はしゃいでしまったほどだ。他のメイン、里枝を安藤サクラさん、里枝の夫を窪田正孝さんと、演技派で固められている。原作が好きすぎると映像化に不満を抱くこともあるが、『ある男』に関しては、絶対すごい映画になると、期待感しかなかった。
結論から言うと、とても良い映画だった。
とにかく、丁寧に作られていた。
ストーリー自体は、原作を先に読んでいるので、面白いとわかっていた。
ただ、原作と映画には構成に大きな違いがあった。
原作は額縁構造になっていて、冒頭、作者がバーで出会った『城戸さん』のことを、小説にするに至った経緯が語られる。
そして、城戸さんがのめり込んだ『ある男』の身元調査がどういったものだったか明かされていくのだ。
映画は、チラ見せ程度にバーが出てきて、すぐに宮崎での里枝の日常になり、谷口大祐との出会いと交流が丁寧に描かれる。里枝が抱えている悲しみや、大祐の優しさなどが、じっくり描かれていたので、大祐が亡くなるシーンは、ほんと悲しくなった。
原作では説明で済まされた部分が丁寧に描写されたため、原作で書き込んであった部分は多少省かれていたけれど、それは二時間に収めるために仕方のないことだと思った。
原作と映画では、ずいぶん配分が違っていた。原作は、谷口大祐を名乗っていた男『X』にのめり込んでいく城戸に感情移入して読むものだった。原作で『X』の過去は、城戸が会いにいった相手から聞かされるだけだったが、映画ではその話の内容が、シーンとして挿入されていた。だから、『X』に感情移入しやすい作りになっていた。
この映画で、とにかく良かったのが、柄本明さんだった。
あまりに良すぎたので、映画を見終わって一番に検索したのが、「柄本明 ある男」というワードだった。するとすぐに、「ある男」妻夫木聡、柄本明との共演に感慨「喰われるってこういうことなんだ」という記事が出てきた。
そしてもう一人良かったのが、里枝の前夫との間の息子悠人を演じた坂元愛登くん。オーディションで選ばれ、この作品で映画デビューだったらしい。複雑な立場にある少年を、見事に演じきっていた。
原作内にかなり書き込まれていた差別問題も、きっちり映画内で提起されていた。少し、原作のミステリー要素だけを抽出して映画化されるんじゃないかと心配していたが、コンパクトにまとめられながらも、大切なところはきっちり織り込まれた本当に良い映画だった。
原作を読んでいる人は、ラストシーンで「ほう、こうくるか」と、思うはずだ。
私は、Twitterのプロフィールに「Spitz文学目指してます!」と書いていますが、ジャンルとして、Spitz文学が存在しているわけではありません。
ずいぶん前、どのくらい前かというと、綿矢りさ先生が『蹴りたい背中』で芥川賞をとった数年後くらいのこと、三田誠広先生の『深くておいしい小説の書き方』を読み終わった途端に小説が書ける気になって、その勢いのまま、初めて長編小説を書き上げました。
だいたい、原稿用紙で180枚くらいだったと思います。
その時、スピッツの『三日月ロック』に入っている『夜を駆ける』という曲を、1曲リピートで流し続けながら書いたのです。
書いている間、没頭しすぎて他人とまともに会話できなくなりました。多分、表情が乏しくなって目も死んでいたと思います。
私は、集中すると音が聞こえなくなるので、実は、曲を流していても聴いていません。
それでも、本文や、小説の雰囲気など、かなり、流していた曲の影響を受けています。
最初に上手くいったので、それからも、作品ごとにSpitzの曲からテーマソングを選んで、書く間は一曲リピートで流し続けることにしたのです。
その後も、何本か小説を書きました。どれも、誰にも読まれないまま、何年もPCのHDDに眠っていました。
2014年。その頃、資産運用アドバイザーをしていたため、四六時中、マーケットの動きを追っていて、小説を書くどころか読む時間もとれない生活をしていました。
何かのきっかけで、小説投稿サイトの存在を知って検索をかけました。
そこで、エブリスタを見つけてなんとなく登録したのです。
まず、最初に書いた小説を投稿してみることにしました。書いてから年月が経って変わったしまった部分(携帯からスマホになったり、薬学部が六年制になったり)を修正しながら、連載しました。
最初の連載終了時のしおりは、11くらいでした。それでも誰かに読まれているというのがとにかく嬉しかったのです。
私がは初めて書いた長編小説は『藍 深紅 ……(現在は、さらに手を加えた改訂版が公開されています)』です。
今だったら絶対にしない比喩表現など、あえて残してあります。
こんな感じで、各作品のテーマソングがどの曲かなど、少しずつ紹介していこうと思います。
今回はどうして『Spitz文学』なのかの説明だったので、次回は、『夜を駆ける』の魅力を語ります。